鬱、無職、窓辺にて。

現在はただの窓辺です

年を越した

山で年越しテント泊をしてきた。
持っているザックに全然荷物が入らず朝になって諦めるか迷ったが、干し肉とおでんまで仕込んでどこにも出ずに過ごす気かと己に活を入れ気合で出発。
シュラフは適当な袋に入れて手で持って登ることにした。

山といっても頂上まで2時間もかからず、観光&ハイキングスポットでもあるので道も山頂も綺麗に整備されている。

チェーンスパイクを買ったので雪道を歩くの楽しみにしていたが、今年はスキー場もオープンできないほど雪が少ないようで、さらに前日の雨もあってうっすらとしか積もっていなかった。

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夕方に登ったので空が赤くて綺麗。
晦日でもトレーニングで走ってる人が多くいた。
荷物のせいで片手が塞がっていたが、ゆるやかなコースだったので何の問題もなく進むことができた。

頂上にはロープウェイで来る観光者のための施設に加えて登山者のための休憩所まで併設されていて驚いた。トイレや更衣室、椅子や机のちょっとしたスペースまであってしかも24時間使えると…凄い。

人がいなくなってからいそいそとテントの準備を始める...
誰にも見つからないような隅で張ろうかと思ったが、寒そうだったので建物の隣に張った。ナイトハイクで来ていた人達に「うわテント持ってきてる人いる...」などと遠くから呟かれた。
街中の山だし同じことをやってる人は毎年たくさんいるんじゃないかと思っていたが意外にも私だけだった。

 

 

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こんばんは!キュアハートだよ!ここでご飯の時間!
じゃじゃーん!!
これはセイコーマートで買ったモツのトマトハーブ煮込み!
セコマの冷凍つまみは世界一!
特別な日はエールビール飲んでいいってばっちゃが言ってた!!!

 

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うわ~~!!おでんだ~美味しそう~~
え!?お家で作って持ってきたの!?
偉すぎるよ~~

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ひゃあ~~夜景すっごいね~~~!!
もしかしてこの煌めき、「かいしゃいん」って人達が作ってるの…?
まさかそんなわけないよね…?大晦日だもんね?ね?...え??




この日の気温は氷点下10℃。
寒さに耐えられるか不安だったが、家にあるもこもこ服を総動員させなんとか乗り越えた。だが手袋は1枚しか用意してなかったので手がかなり辛かった。カイロがあると良さそう。
夜はたくさん雪が降り0時頃には街は雲で隠れてしまっていたが、遠くで打ち上げられた祝いの花火が見えてなかなか良い年越しだったと思う。

テントの中では他のおつまみやら干し肉(仮)やらを食べながらずっと本を読んで過ごした。
角幡唯介さんの「極夜行」という極夜探検記。
暗闇の支配する世界を歩き続けた先で太陽を目にした時人は何を思うか、というのが大テーマとしてあり、
テクノロジーの発達で地理的未知というものがほぼなくなった現代に人間界のシステムの外側に身を置くことで根源的未知の探検を目指す。

 月の光と、それらに照らされて闇夜に白くぼわーっと浮かび上がっている幻想的な光景の中を歩きながら、私は完全に宇宙空間を探検しているような感覚に陥った。
 音もなかった。風もなかった。光もわずかしかなかった。そこにあるのは私と氷と星と月。あとは犬。逃げ場のない状況のなかにいるせいで、私は宇宙そのものである周囲の風景のなかに組み込まれ、溶け込み、一体化していた。月、星、闇、風、氷、犬、周囲の要素ひとつひとつが私の命運をにぎっており、私と見えない糸でつながっていた。
 風景が美しく見えるのは、私が単なる観光客としてこの場にいるからではなく、生きようとする一人の人間としてそこにいるからだった。闇や星や月は見た目の美しい鑑賞物としてではなく、私と本質的な関係をもつ物体や現象として、そこにあった。私は天体をよすがに旅をし、闇は私を支配する。私はこれらの要素と相互に機能しあう環世界の中に完全に入り込んでいるわけだった。

ここを読んだとき、思わずこちらもふわーっとした気持ちになりどんな世界なんだろうと想像した。

旅の序盤で六分儀を無くして道中で迷い、身体感覚やコンパスも信じることができなくなった著者。

 不安に耐えられなくなった私はまた北極星を見上げた。そして針路が正しいことを確認した。不安に駆られては北極星を見上げ、右手を上げ下ろし、また立ち止まっては星を見上げ・・・ということを何度も何度もくりかえした。このとき北極星は私にとっての神と化していた。天空の神として私が正しい方向に歩んでいることを啓示し、そして私はその啓示を受け取り安堵していた。それは見上げるというより、実質的には崇めるという行為に属しているといっても過言ではなかった。(中略)
 極夜の闇の中で私は己を捨て、星だけを信じなければならない状況になっていた。もしかしたら私はこのとき信仰というものの原初的形態を経験していたのかもしれない。

引用元: 角幡唯介  『極夜行』

 
犬1匹連れての旅だったので犬の話も多くて面白かった。
にしても氷点下30度を下回るような環境でも人間って毎日何時間も歩いて生きていけるんだな。人間社会はどんどん発展しているけど個体としての人間というのは退化してるような気がしてならない。 
そしてテントの中で本読むっていいな...

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帰りはさくっとロープウェイ。早朝からたくさんの人が来ていた。生憎の天気で初日の出は見れなかったが、ロープウェイから見る真っ白な景色もとても綺麗だった。

あ、写真はケーブルカーです
楽しかったな
おわり